「Shall we ダンス?」で知るト書きの面白さ
「Shall we ダンス?」知ってますか?
1996年に公開され、役所広司さんが出演して大ヒットした映画です。
この映画には「セリフではなくト書きで語る」という部分でとても勉強になるかと思ったので、今回取り上げてみたいと思います。
(めちゃくちゃネタバレします)
分析
(世界観やキャラクターのセッティング)
主人公は40代のサラリーマン。可愛い妻と結婚し、娘も産まれ、夢のマイホームも買った。本当だったら幸せなはずなのに、なぜか退屈を感じていた。
(起)
そんな日々の中、帰りの電車の窓から見えるダンス教室の女性が気になった。意を決してダンス教室に行く主人公。グループレッスンに申し込むことにする(しかしグループレッスンの先生はおばあちゃんだった。残念!)。
(承)
・真面目にレッスンを続ける主人公。いつしかのめり込み、電車の中でも会社のデスクでもとにかくステップ。ステップ。そして意を決して女性をご飯に誘うも、「私目当てならダンスを辞めて」と言われてしまう。それでも主人公はめげずに毎日ステップステップ…。
・主人公が頑張っている姿を見た女性は、おばちゃんとダンスの大会に出ることになった主人公のコーチをすることに。女性も主人公に心を開き始め、ふたりの仲はどんどん良くなる。
・しかしそれと同時に、主人公の帰りが遅いことから浮気を疑っていた妻の不安もピークに…。
(転)
ダンス大会当日、おばちゃんと最高のダンスを披露して審査を通過する主人公。しかし会場に妻と娘が来ていたことに気づいてしまう。そして動揺して他のダンサーとぶつかり、おばちゃんの衣装を破くという大失態。真面目な自分には、もともと縁の無かった世界だったんだとダンスを辞めることに。
(結)
・女性から、海外でダンスをやり直すからと、送別ダンスパーティーに誘われる主人公。妻は「行っていい」と言うも、意固地になって行きたがらない。その2人を見た娘は主人公と妻を庭先で踊らせる。2人の間のわだかまりがようやく溶けていく。
・ダンスパーティー当日、時間ギリギリまで悩むも、ようやく向かう決意をし、女性と踊る。
◯ト書きの面白さ
僕が今回特に面白いと思うのはこの部分です。
・真面目にレッスンを続ける主人公。いつしかのめり込み、電車の中でも会社のデスクでもとにかくステップ。
台本上には、
◯通勤電車で足運びの練習をする主人公。
◯会社のデスクで仕事をする主人公。デスクの下では足運びの練習をしている。
としかおそらく書かれていないでしょう。セリフも全くなく、しかもそれぞれ10秒あるかどうかといったシーンです。
しかしこのシーンがあるからこそ、
「今まで電車の窓からぼーっと外を見ていた主人公」が、「日常的に練習するほどダンスにのめり込んだ」ことが伝わるのです。
さらに、「どこでも練習をする主人公の真面目な性格」も表れているでしょう。
起承転結の中の「承」の部分でこのようなことを、ト書きを用いることで、遊び心満載に伝えているのです。